The Marketing Nation Summit 2017 基調講演(後編)~エンゲージメントで事業を加速させた3社が語る、顧客との向き合い

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10月13日に開催した「THE MARKETING NATION SUMMIT 2017」。前編に続き、本稿では基調講演の後編として、Forbes JAPAN x  Marketo パネルディスカッション「Engagement Economy時代の成長戦略」の模様をお届けします。Engagement Economyの波をいち早く捉え、お客様の心を掴むことで、ビジネスを成功に導いている3社では、どのような取り組みがされているのでしょうか。

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<モデレーター紹介>
Forbes JAPAN
副編集長 九法 崇雄氏

2004年プレジデント社に入社。2014年より副編集長。特集デスクを担当するほか、ジャーナリスト田原総一郎氏が若手企業家に切り込む「次代への遺言」をはじめ、様々な連載を立ち上げる。企画、担当した書籍に『起業のリアル』『仕事漂流ー就職氷河期世代の働き方ー』など。2017年2月よりForbes JAPAN 副編集長に就任。

 

<パネリスト紹介>
富士フイルム株式会社
e戦略推進室 室長 板橋 祐一氏

1985年富士フイルム入社。富士宮研究所、電子映像事業部、イメージング事業部にて、デジタルカラープリントシステムやチェキの開発、商品企画、事業戦略を統括。2012年より現職(e戦略推進室長)。ストラテジー、サイエンス&スピードを重視し富士フイルムグループのデジタルマーケティングをグローバルに推進中。東京工業大学高分子工学修了。

 

VAIO株式会社
執行役員 花里 隆志氏

1992年ソニー株式会社入社。同社国内営業本部でVAIOビジネスの立ち上げに参画した後、VAIO事業本部B2B事業室長、戦略部統括部長を歴任。2014年7月、VAIO株式会社設立と同時に執行役員に就任、ECサイトおよび技術営業部の立ち上げ、EMS事業の確立など一貫して営業活動を推進。現在に至る。

 

株式会社トラストバンク
経営戦略企画グループ グループリーダー 武内 一矢氏

2009年、株式会社オウケイウェイヴ入社。マーケティング本部マネージャーとして、ソーシャルメディアを中心としたプロモーション戦略を展開。2015年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、アプリゲームユーザー向けのコミュニティマネージメントおよびプロモーション施策実行を担う。2017年3月、約2,800億円のふるさと納税市場におけるリーディングカンパニーである株式会社トラストバンクに参画。約170万を超える会員数を有する、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」事業の会員向けマーケティング戦略策定のほか、プロモーション企画立案や実行、市場分析等を管轄。

 

お客様の声に耳を傾けるって、どういうこと?

九法:先ほどのSteveさんや福田さんのお話の中で、“Engagement Economy”という言葉が何度も登場しました。エンゲージメントという言葉は、日本だけなく米国でも様々なメディアで取り上げられるバズワードとなっていて、マーケティングだけでなく人事などの領域でも用いられています。

企業と企業、企業と人、人と人の結びつきや関係性が重要だということから、Steveさんも“Engagement Marketing”ではなく“Engagement Economy”という言い方をされていたのではないでしょうか。

市場にモノやサービスが溢れてなかなか新商品を買ってもらうのが難しくなっているというのは、10年、20年前からずっと言われてきたことだと思いますが、デジタルのコミュニケーションが当たり前になった今だからこそ、よりその傾向が強くなっているように思います。

ふるさと納税のプラットフォームを運営されているトラストバンクさんでは、そもそもふるさと納税という制度を知らないユーザーを「ふるさとチョイス」のサイトへ導くために、どういうアプローチをされたのでしょうか。

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副編集長 九法 崇雄氏

武内:結果論かもしれませんが、マスメディアの力によって先駆者利益が得られたというのが大きかったです。ふるさと納税という制度ができた当初は、ITリテラシーが低いという理由から、自治体がふるさと納税を始めていない状況がありました。

「サイトに載せる画像をください」とお願いしたら「FAXでいいですか?」とか「郵送でいいですか?」と聞かれる状態だったので、なかなかライバル企業も出てこない。我々はビジネスというより現場の相談レベルで、無償であちこち駆けずり回りながら、まずは形を作り上げました。

結果として、その過程で導入自治体数を確保できたので、メディアでふるさと納税が取り上げられる際には「ふるさとチョイス」が紹介されるという好循環が生まれました。

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経営戦略企画グループ グループリーダー 武内 一矢氏

九法:自治体と良好な関係を築き上げたことが良かったのですね。続いてVAIOの花里さんに伺います。VAIOはもともとコンシューマー向けの製品だったところから、2014年にソニーから独立された際にメインターゲットを法人へと切り替えられたそうですが、新しい市場を切り拓くにあたり、どのような取り組みをされましたか?

花里:ソニー時代の売上比率は、80%〜90%がコンシューマーで、10%が企業でした。しかし、メインターゲットを切り替える上では、勝算はありました。幸いなことに、VAIOというブランドとPCをご存知のコンシューマーがたくさんいた。コンシューマーというのは、結局、企業では選定者だったりIT担当の方だったりするわけですから、その方々がVAIOの利用者だったとしたら、会社でも使い慣れた、いいものを選びたいというのは当然です。

ただ、企業でご利用いただくにあたって、お客様の声を聞いてみると、いろいろな不満があることが分かりました。例えば、グローバル展開しているPCではプロジェクタ用の端子がHDMIしか付いていないのに対し、日本ではVGAがないと困るといったように、日本企業では特殊な要件が色々とあるんです。まずは商品をお客様に合わせていくということで、1年後に一気に改良を加えました。

その後、企業としての信頼性を高めるために、お客様を訪問してご意見を伺いながら商品紹介させていただくというベタなことをやりました。法人部隊や技術サポート部隊をつくって、しっかりやっていったんです。

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執行役員 花里 隆志氏

九法:ここでもやはりお客様の声を聞いて、コミュニケーションを重ねていくことが鍵になっていたんですね。板橋さんがいらっしゃる、富士フイルムではフォトブックを作っていらっしゃいますが、個人向けの写真集市場を0から作られたということで、具体的にどのような取り組みをされてきましたか?

板橋:フォトブックはこの10年くらいで随分伸びた商品ですが、当初は“今までとは違う写真の楽しみ方”という切り口で米国から始まりました。日本でもやってみようと、マスの力を使って市場を立ち上げたのですが、2〜3年も経たないうちに伸び悩むようになりました。

その理由を探るべく、原点に立ち返ってお客様のことをいろいろ調べたところ、子育て中のお母さんのユーザーが多かったので、しっかりとした紙で、20年、30年と長く思い出に残したいというニーズが見えてきました。当初のフォトブックは、印刷に近い技術で作った薄い紙の雑誌のような形状だったので、お気に召さなかったんですね。

それなら、お店でプリントする写真と同じような材質の紙にしようと思ったのですが、そのままの材質では本の形に加工ができない。フォトブックに最適な素材を開発するだけでなく、きれいに開いて写真が見やすいような製本方法も開発しました。

さらにアナログ時代と違って、スマホなどで今はみなさん大量に写真を撮られますから、短い時間で自分の欲しいフォトブックが作れるよう、AIのようなものが入った編集ソフトも開発しました。そうしたら、止まっていた市場がまた伸び始めたんです。

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e戦略推進室 室長 板橋 祐一氏

九法:やはり3社とも共通するのは、お客様の声を聞いて、それをもとに商品やコミュニケーションを改良してきた結果、事業の成長につながったということですね。

 

情報過多な時代にも、的確にリーチする方法とは?

九法:Steveさんのお話の中でも出てきましたが、デジタルコミュニケーションが当たり前になっている中でメールを送っても、なかなか開封してもらえないという状況があります。武内さんのところでは、ユーザーにリーチするためにどんな工夫をされていますか?

武内:メールはMarketoを使って1to1のコミュニケーションを促進するよう、改善している途中なのですが、そもそもメールを見ない方やWebサイトからは寄付したくない方もいらっしゃるので、有楽町に「ふるさとチョイスCafe」というリアル店舗を作っています。そちらに来ていただければ、ふるさと納税に関する疑問にお答えしながら、お申し込みまでしていただけます。他にも、カタログと電話申し込みのセットを作るなど、タッチポイントを増やす取り組みをしています。

九法:デジタルだけではなくアナログなコミュニケーションもされているということですね。では花里さん、VAIOではいかがでしょうか。

花里:我々もソニー時代からのファンのみなさんのエンゲージメントを高めるために、新製品発表会やファンミーティングなど、お客様が何を考え、VAIOのどこを好きでいてくれるのかを直接お聞きできる場を定期的に設けています。

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九法:最後に板橋さん。富士フイルムではフジカラーの年賀状のCMを2016年にやめたと聞いて驚いたのですが、マス広告をやめた影響はありませんでしたか?

板橋:なぜ30年にもわたってCMを続けていたかというと、「年賀状の季節が来ましたよ」という季節感を演出するためと、写真付き年賀状を初めて作る方に向けてメッセージを送りたいという2つの目的がありました。前者は最近、日本郵便さんがCMを流してくれるのでお任せできるし、後者はデジタルを使った別のやり方に転換できるのではないかと。

実際、CMをやめてみても、写真付き年賀状のビジネスはむしろ増えているくらいで、あまり影響はありませんでしたね。年賀状は“究極のSNS”だと思っているんです。年賀状に使う写真はちょっと盛るじゃないですか(笑)。年に一度でもリアルに手元へ届く、モノの形でお届けできるSNSは年賀状しかない。

一方で、CMの代わりとしてデジタルを補完するという意味では、リアルのDMとデジタルを組み合わせるのは、格段に刺さりますね。

九法:まさにサンフランシスコで開かれた「THE MARKETING NATION SUMMIT 2017」でも同じような話がありました。「今、DMが効くんだ」と。デジタルが当たり前になったからこそ、アナログなアプローチが効くケースが増えているようですね。

御三方の話から見て取れるのは、これから成功するマーケターには、人間のことを深く理解する力が求められているのだということです。九法氏は最後に「これはAIの時代になっても、人間にしかできないこととして残っていくと思いますので、みなさんも『人の心を知る』ところから始めてみてはいいのではないでしょうか」と話し、セッションを締めくくりました。

基調講演の模様は動画でもご覧いただけます。

ShimizuMari

マルケトでマーケティングを担当している清水真理です。

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