Tomorrow’s Marketer これからのマーケター vol.20 【CMO対談】トラストバンク×マルケト ~ (前編)「ふるさと納税」の裏にある思いを分析し、地域活性化を目指す

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Posted: 2017-12-20 | Tomorrow's Marketer

今後のマーケティングのあり方、マーケターが目指すべき姿について斬りこんでいく連載企画「Tomorrow’s Marketer」。今回は、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の運営を軸に、地域活性化に取り組む株式会社トラストバンクのマーケティング戦略室 室長 武内 一矢氏をお迎えし、弊社・バイスプレジデント 小関 貴志とのCMO対談をお送りします。

「ふるさと納税」とは、自分が住んでいる地域以外にも、生まれ故郷や応援したい自治体に寄附ができる納税制度です。寄附金については税の控除が受けられ、返礼品として魅力的な特産品がもらえる地域も。寄附する側と自治体双方にとってメリットの大きい制度とあって、昨今市場が拡大しています。

多くの大手ネット企業がふるさと納税事業に参入する中、2012年に開設された「ふるさとチョイス」はその先駆者的存在で、掲載自治体数は1788、申込み累計件数にして2000万件超(共に2017年11月2日時点)。契約自治体数1,300自治体超を有する業界No.1のポジションをキープしています。

自治体の数や返礼品、寄附する側の属性や動機も多岐に渡る事業にあって、いかに寄附というアクションに向けて適正なメッセージを伝え、健全な市場形成をサポートしつつ、地域活性化を実現していくのか。

同社のマーケティング業務を統括する武内氏に、お話を伺いました。

 

ICT、マーケティングスキルによって、地域活性化を実現していく

小関:先ほど、「ふるさと納税」の返礼品が紹介されているカタログを拝見しました。地方色豊かな特産品の数々が掲載されていて、見ているだけで実に楽しいですね。

まずは御社の事業、運営する「ふるさとチョイス」の概要について教えていただけますか。

武内氏:弊社は、「ICTを通じて地域とシニアを元気にする」をミッションに、ヒト、モノ、お金、情報を循環させることで、地域活性化を支援しています。さまざまな事業を展開する中、「ふるさとチョイス」は、お金が直接、地域に届く「ふるさと納税」に着目した取り組みの一つとなります。

その他にも、ふるさと納税に関するセミナーを実施するほか、自治体向けの「ふるさと納税全国サミット」の開催や店舗事業として「ふるさとチョイスCafé」運営など、幅広く地域活性化支援事業を展開しています。

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小関:元々、IT業界ご出身と伺っていますが、地方活性化支援という事業フィールドを選ばれたきっかけは何だったんでしょうか。

武内氏:新卒で入社したのは「OKWAVE」というコミュニティサイトを運営する会社(株式会社オウケイウェイヴ)で、BtoB、BtoC共に、マーケティングや新規事業周りに従事していました。

「OKWAVE」は、Q&Aサービスを展開する、いわば助け合いのプラットフォームで、ICTの力で人をサポートするという点では、今の仕事にもつながっています。

同社在職中に東日本大震災が起き、趣味のコーラスでチャリティイベントに参加していたのですが、規模感を持って、しっかりと収益を上げられるような「社会貢献性の高い事業に関わりたい」と考えるようになりました。

そのために、もう少しIT分野でスキルアップしたいという思いもあり、株式会社ディー・エヌ・エーに転職し、アプリのマーケティングに従事しました。

そこでのキャリアの蓄積を経て、IT分野におけるマーケティングスキルを地域の課題解決に生かせる事業会社を探す中、17年3月、弊社にジョインすることになりました。

小関:「ふるさと納税」という制度を、より良い形に広めていくマーケティングに従事されたいと考えられたわけですね。実際には、どのようなお立場でいらっしゃるのでしょうか。

 

寄附の動機が、物質的欲求から社会的欲求、承認欲求にシフトしつつある

武内氏:今の仕事は、マーケティング戦略室 室長という立ち位置で、「ふるさとチョイス」事業に関するマーケティング、広告、分析全般を管轄しています。

具体的には、テレビCMなどのマスプロモーションから、SNS広告やリスティング、さらに、同制度の認知・啓蒙といったブランディング施策も行っています。弊社サービスの分析などを通じ、寄附のトレンドや地域単位での定量的な分析も行い、自治体へのフィードバックも実践しています。

軸足、ゴールとしては、「ふるさと納税」市場でのシェア・事業拡大といったことも大事なポイントですが、あくまでも地域活性化にどう寄与できるかを念頭に、施策を展開しています。

小関:単純に自社の売上アップではなく、その先を見据えてマーケティング活動に取り組んでいらっしゃる。必然的にとる施策や重視するポイントも、他の事業者とは変わってくるというわけですね。

そもそも、「ふるさと納税」を利用される方は、応援する自治体をどういった基準で決めるケースが多いのでしょうか。

武内氏:動機でいうと、税の控除が受けられ、実質負担2000円で、さまざまな返礼品をもらえるという「おトク感」が入口になるケースは多いですね。

小関:「ふるさと納税」制度の認知が広がった一つの理由でもありますね。

武内氏:はい。弊社でも「マズローの欲求5段階説」で分析したりするのですが、まずはわかりやすい物質的欲求がインセンティブとなり、スタートする方は非常に多いです。

しかし、「モノからコトへ」と言っていますが、制度施行から年月がたち、市場が成熟化してくると、返礼品で寄附先を選んでいたのが、寄附を通じて地域にいかに貢献できるか、そこにどう自身がリアルに関わっていけるのかを重視する層も以前より増えてきています。

アクションを起こす動機の多様化を受け、自治体側も、ただ豪華な品を用意するのではなく、「頂戴した寄附金を何にどう活用するか」、モノを送るだけでなく「外から人を呼び込むにはどうするか」といった施策に注力するような変化も表れ始めています。

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小関:先のマズローのモデルでいうと、寄附する側のモチベーションが「社会的(帰属)欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」のフェーズに上がってきた、と。

 

「新規獲得」「利用促進」「共感の醸成」の3つの段階に分け、メッセージを届ける

武内氏:こうした観点も踏まえ、マーケティング施策の軸としては、「新規獲得」「利用促進」「共感の醸成」の3つのフェーズに分けて考えています。

新規獲得については、弊社サイトなどを通じた「検索・共有」、いわゆる「AISAS(アイサス)」「AISCEAS(アイセアス)」で、「面倒くさい」「よくわからない」といった方へ、適切なメッセージでアクションにつながるコミュニケーションを実践しています。

2つ目の利用促進については、所得や家族構成によって異なる上限額まで寄附額を引き上げていただくことがポイントとなります。

小関:上限額まで寄附をされない方々の理由は多種多様かと思われますが、どのようにメッセージの出し分けを実践されているのでしょうか。

武内氏:例えば、多いパターンだと、年末に向け、駆け込みで寄附をしたいと思ったものの、「返礼品が冷蔵庫に満杯、これ以上入らない」。そういう方には、日持ちするものや、発送時期を選べる品だけをご紹介する。また、ポイント制を導入している自治体で、年内はまずはポイントに交換し、後から特産品を選べる仕組みをご紹介する。

Marketoなどのテクノロジーを活用し、スコアリングを実施。要因の仮説を立て、その方に合ったシナリオを組み、コンテンツを配信しています。

同じように「もうモノはいらない」という方に向けては、「地域の犬の殺処分をゼロにする」「宿泊施設がなかった町に観光客がゆっくりステイできるゲストハウスを作る」といった課題に取り組んでいる事例、「ガバメントクラウドファンディング(自治体が実施するクラウドファンディング)」の情報もご提供しています。

小関:「モノはいらない」という方に、いくら豪華な返礼品の情報を届けても響かない。社会的欲求、承認欲求というフェーズで、モチベーションを感じていただけるようなメッセージを訴えていくわけですね。

武内氏:関連して、3つ目の「共感の醸成」というところでも、地域での新しい取り組みや、寄附によって実現した事例を紹介する動画コンテンツを特設コーナー「Choiceeds」で紹介するなど、より強く共感していただけるようなメッセージを工夫しています。

小関:特に「共感の醸成」という施策に関しては、なかなか定量的な効果が見えにくい部分ではありますが、実際のユーザーの気持ちの変化、その評価についてはどう捉え、実践していらっしゃいますか。

武内氏:いわゆる“獲得型”の施策ではないので、評価しにくい部分ではありますが、四半期ごとの市場調査なども通じて、制度の理解や寄附の意向などをリサーチし、その変化を一つのKPIとして見ています。

こうして定性的な声を拾っていくとともに、定量的な数値を見ても、さまざまな施策による一定のインパクトは生まれつつあるという結果も得られています。

後編では、“寄附”というフィールドにおけるマーケティングの難しさと、そこに挑む社会的意義と同社が目指すゴールを、マーケターに向けてのメッセージとともに、深堀りしていきます。

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ShimizuMari

マルケトでマーケティングを担当している清水真理です。

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