Tomorrow’s Marketer これからのマーケター vol.20 【CMO対談】トラストバンク×マルケト ~ (後編)寄附を促すポイントは、“ファンづくり”より“当事者づくり”

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Posted: 2017-12-20 | Tomorrow's Marketer

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の運営を軸に、地域活性化に取り組む株式会社トラストバンク マーケティング戦略室 室長・武内 一矢氏をお迎えした「Tomorrow’s Marketer」“CMO対談”は前後編の2部制でお届けします。

前編に続き、後編では、寄附市場におけるマーケティングの難しさと、そこに挑む社会的意義、同社が目指すゴール、そこにテクノロジーが貢献しうる可能性などに関し、弊社・マーケティング本部長の小関 貴志と語り合っていただきました。

 

「ふるさと納税」をステップに「ガバメントクラウドファンディング」も支援

小関:個人的な話で恐縮ですが、私自身、ITやセールス&マーケティングの領域を支援するNPOの共同代表理事を務めています。そういったことから、寄附という文化が、どうしたら日本に根付いていくのかに非常に興味がありまして、「ふるさと納税」の動向にも注目してきました。

ただ、その時の経験も踏まえて思うのは、寄附という市場におけるマーケティングとは、いかに難しいものか。これまでのお話にあったように、アクションを起こす動機もバラバラなら、モチベーションの働き方も千差万別。いつ、どのようなタイミングで寄附をしたいと考えるかも、さまざまなフェーズがある。

新たな分野に挑まれる立場として、いろんなご苦労があるのではないでしょうか。

武内氏:おっしゃる通り、震災などの経験を経て、多少、潮目は変わりつつありますが、欧米などと比べ、日本において「寄附をする」という行動には、まだまだ高いハードルがあると思います。

そうした現実を踏まえても、「ふるさと納税」は、先にも申し上げたように寄附というアクションに向けての動機が「モノからコトへ」と広がっていく可能性を大いに擁している。

市場全体の意識づけ、啓蒙活動も含めたブランディングにも、まだまだ取り組む余地が大きいと考えています。

例えば、先に挙げた「ゲストハウスを作る」というガバメントクラウドファンディングの取り組みを実践した高知県越知町は、仁淀川という非常にきれいな川が流れていて、ラフティングができるなど、観光資源の豊かな町。ただ、宿がないために、訪れる観光客の数も限界がある。

では、ゲストハウス設立プロジェクトに際し、いかにマーケティングメッセージを出していくか。そこにはさまざまなやり方があると思います。

社会的意義という観点から刺さる方もいらっしゃれば、越知町のご出身で地元愛からアクションを起こす方もいらっしゃる。あるいはクラウドファンディングという仕組み自体に関心を持つ方もいれば、立役者となる地元の方々の思いに共感する方もいらっしゃる。

まさにさまざまな訴求軸、共感軸がある中、One to Oneでメッセージの適正化を図っていく上では、リアルな人々の思いに寄り沿いつつ、Marketoを始めとしたテクノロジーをうまく味方につけていくことも肝要だと考えています。

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小関:まさに長期スタンスで、個々のユーザーに寄り沿うエンゲージメントを実践されている、と。そこに我々としてもぜひ貢献していければと考えています。

 

テクノロジーの力で、地域と寄附する側のギャップを“見える化”できる世界

小関:多くのプロジェクトを走らせる中、特にガバメントクラウドファンディングのチームは何名くらいで回していらっしゃるんですか。

武内氏:主力でプロジェクトを運営しているのは4~5人程度です。ただ、多種多様なプロジェクトがあり、少人数で異なる施策を実践していく必要がある中、一つ共通しているポイントがあります。

それが「課題感をきちんと伝えること」。

つまり、なぜそのプロジェクトが必要なのかという必然性、それが実現して誰がどういう恩恵を受けるのかというところを具体的にメッセージングできなければ、共感およびアクションにつなげることができない。

小関:非常に重要な視点ですね。自治体の方々がアピールしたいことと、受け手のニーズがズレるようなケースもありますか? 御社が間に入って調整していくような場面も多いのでしょうか。

武内氏:ネガティブな側面を出すことを躊躇されるケースは多いです。強い地元愛から、「魅力を訴えたい」とおっしゃるのですが、ネガティブな面も含めた課題をきちんと伝えていかないと共感は生まれないんですよね。

よく「ファンづくりをしたい」という御要望もいただくんですが、ヒト、モノ、お金、情報という資源が潤沢でない多くの自治体にとって大事なのは、「ファンづくり」より「当事者づくり」ではないかというのが私の考えです。

じゃあ、いかに当事者意識を持っていただくか。その起点となるのはやはり人だと思います。

そのきっかけは寄附でもらえる野菜や肉、魚といった地方の特産品でいいと思います。モノを入口に、「台風が来ているけれど、農場に被害が出ていないかな」「シケで漁港は大丈夫かな」など、納税先、産地に住む人々に思いをはせていただく。

「ふるさと納税」には、こうした当事者意識の醸成を広げていけるようなパワーもある。そのためには、まだまだやらなければならないことがあると考えています。

小関: マーケティングオートメーションを活用し、メッセージの適正化を実践されているというお話がありましたが、その他、Marketoに限らず、さまざまなテクノロジーが寄与できる可能性、課題については、どうお考えでしょうか。

武内氏:パーソナライズという作業が基点になるわけですが、さまざまなケースで上手くいかない場合の要因で多いのが、実は「思い込みでやっている」ことが挙げられます。

返礼品の選定一つでも、「これがイチオシの人気商品」という地元の思いに対し、実は首都圏の住民にはそれほど思いが届かなかったり、逆に「意外にコレが受けるんだ」となったりすることもある。

こうしたギャップが、テクノロジーの活用により、定量的な形で見えるようになれば非常に大きい価値になります。

良いもの、悪いもの含めて、目に見える成果、反響を我々がフィードバックすることで、「じゃあ、やり方を変えてみよう」とアクションのシフトにもつながる。こうしたことも、外部だからこそ提言できる分野だと考えています。

その観点からも、デジタルがなしうる分野には、まだまだ大きな可能性があるのではないでしょうか。

小関:力強いお言葉をありがとうございます。もちろん、まだ技術の問題などで追いついていない部分もあると思います。こういう世界観が実現できたら、という会社として目指す方向性、あるいは武内さん個人としての思いはいかがですか。

武内氏:大きくは2つあります。ふるさと納税を実践されている方は、潜在顧客、顕在顧客ということでいえば前者が圧倒的に多い。つまり、利用していても、あまり声を大にしては周囲にアピールすることは少ない。

そこを、周りの人を巻き込んでいくような、いわば“アンバサダー”ともいえる顕在顧客が増えていくような取り組みを実践していきたいですね。

2つ目としては、寄附や地域を応援するという行為が、特別すぎない、普通の行動として定着する世界というのも、目指す方向の一つです。

私たちは、“ささやかな貢献意識層”と呼んでいるのですが、気負い過ぎることなく、「この土地が好きだから」といった、理由はカジュアルだけど、顕在的かつ能動的なアクションを起こす。そんなバランス感覚が浸透するような取り組みも、もっと広げていけたらと考えています。

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たった一つの声が、生産者や事業者、地域の元気につながることもある

小関:最後に、今後を担うマーケターの方々に対しメッセージをいただけますでしょうか。

武内氏:一つの社会的ムーブメントにもなった、「ふるさと納税」のマーケティングに関わってきて思うのは、この仕事は予想以上に社会に大きな影響力を持っていることです。

ただ、私自身の課題として考え続けていることに、例えば我々がミッションとして掲げる「ICTを通じて、地域とシニアを元気にする」の、“元気”とは何を指すのか。

「ふるさと納税」を通じて、返礼品が大人気で生産者としての売上がアップすることが、本当に元気、幸せに通じるのかというと、必ずしもそうではない側面もあると思います。

例えば、先日、陸前高田市の牡蠣養殖をされている漁師の方にお会いしたら、「ふるさと納税」への返礼品提供を始めたところ、直接、利用者から御礼の手紙が届いた、と。「うれしいよね。みんなで回し読みしたんだよ」とおっしゃる。

売上・寄附の数でいえば“1”ですが、そのたった一つの声が、生産者や事業者、地域にとっての大きな励み、元気につながることもある。

だからこそ、こちらの思い込みで価値を押し付けるのではなく、日本全国に広がる多層なステークホルダーにとっての“元気・幸せ”とは何かということは常に考えていかねばならないと考えています。

そして、こうしたフィールドに少しでも関心を持っていただける方がいらっしゃれば、採用、パートナーシップなど形にこだわることなく、ぜひタッグを組み、一緒に取り組んでいきたい。同じ熱い志を持つマーケターも大歓迎。ぜひジョインしていただきたいですね。

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同社 オフィス内にある「TRUST BANK MAP」。実際にオフィスを訪れた、全国の自治体の方々によって、各地域のアピールコメントが書かれている。

小関:マーケターにとっても“元気”につながる、かつ示唆に富む興味深いお話をありがとうございました。

単純に「モノを売る」「ファンを作る」ということでなく、人としての本質的な感情に訴えかけることを重視し、自治体と寄附する側双方の思いに寄り沿い、そのマッチング、具体的なアクションの醸成を実践している武内氏。

「寄附市場という難しい分野にあって、業界最大手として、健全な市場形成と地域貢献のあり方を、今なお追求し続ける姿が印象的でした」(小関)

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ShimizuMari

マルケトでマーケティングを担当している清水真理です。

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